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第16回理科シンポジウム(シンポジウム型教員研修)
理科教育とAI
日時:2024年10月26日(土)13:20~17:00
会場:東京学芸大学 中央2号館 S410教室
(参加費無料・対面開催)
事前申込:2024年10月24日(木)まで
(事前申込をされた方には,当日配布する資料をご用意いたします。)
主催:東京学芸大学 理科教員高度支援センター
★シンポジウムのチラシ(pdf)はこちらから
<講演主旨>
いよいよAI(Artificial Intelligence,人工知能)の時代がやってきました。過去半世紀の間に,マイクロコンピュータに始まる小型コンピューターは驚異的な発展を遂げ,現在ではノートPC,タブレット,スマホとして私たちの生活に欠かせないものとなっています。AIも急速に進歩し,私たちの社会や生活そして教育を変革していくでしょう。このシンポジウムでは,AIの理科教育への応用という,パイオニア的実践に取り組まれている方々からの講演と総合討論で,新たな時代の理科教育を考えていきたいと思います。
<プログラム> 総合司会 新田英雄(東京学芸大学理科教員高度支援センター 特命教授)
13:20~ 開会挨拶・趣旨説明
中野 幸夫(東京学芸大学理科教員高度支援センター長)
●第一部 パネリスト講演
13:25~14:00 AIと共生する理科教育
松浦 執(東京学芸大学理科教育学分野 教授)
14:00~14:35 AIを子どもたちの学びの相棒に‐中学校実践例の紹介‐
井戸 季詠子(八王子市立いずみの森義務教育学校 主幹教諭)
14:35~15:20 理科教師×AI ‐教育現場におけるAI活用の未来像‐
真木 大輔(愛媛大学教育学部附属中学校 教諭)
<休憩20分>
●第二部
15:40~16:50 総合討論 司会:新田 英雄
井戸 季詠子,真木 大輔,松浦 執,中野 幸夫
17:00 閉会
第1部 パネリスト講演
AIと共生する理科教育
松浦 執
(東京学芸大学理科教育学分野 教授)
21世紀の教育は知識の伝達にとどまらなくなった。意思決定のために、根拠を意識的して批判的に吟味するクリティカル・シンキングが入ってきた。実体に関する知識については、仮説のもとに実験・観測し、結果を帰納的に一般化する科学的探究方法が、学びの方法としても導入された。これらは現状のAIが代替しないもので、人が養うべき能力である。一方AIは機械で、人の能力を補い、拡張する。どのようなことを補うのか、未知であり想像を超えた状況をもたらすようにも見える。知能機械が学びを加速する時、機械頼りや機械に支配される恐れが常に批判される。
教育の課題は、いかに知能機械を活かすか、ということもあるが、むしろいかに知能機械を活かせる人間力を養うかであろう。その基盤となるのは「自分は何をしたいか」を思考できること、さらには人間にとって究極的に意味のある労働である「他者を気にかける」という事であり、汝自身を知るということに立ちかえる必要がある。
AIを子どもたちの学びの相棒に−中学校実践例の紹介−
井戸 季詠子
(八王子市立いずみの森義務教育学校 主幹教諭)
私たち教師は、子どもたち一人ひとりを大切にし、個に応じた多様な対応をしたいと考えている。しかし、学校現場の限られた人材、時間、予算の中でそれを実現するのは容易ではない。AIと教育が共生することで、人間の教師だけではできなかったことが可能になり、より良い教育を提供できるのではないだろうか。
発表者は、AIを新たな対話者として授業に迎え、公立中学校で以下の実践を行った。
1.AIの功罪についてのメディア・リテラシー教育
2. 実験器具を扱いながらChatGPTを相手に個別に問いを展開する理科の単元導入
3. 理科の単元末の振り返りにおいて生徒自身が選択する個別のフィードバック
これらの実践を通じて、子どもたちはAIをどのように受け止め、何を感じ、どのように考えたのか。子どもたちの思考や感情の変化をアンケートから考察し、AIが教育に与える可能性について議論したい。
理科教師×AI −教育現場におけるAI活用の未来像−
真木 大輔
(愛媛大学教育学部附属中学校 教諭)
教育現場でAIをどのように活用し、学びの質を高めていくか。本発表では、AI技術を活用した教育実践事例を紹介し、新たな可能性を探る。具体的には、校務支援と生徒の学習支援の両面から、AI活用の実践例を取り上げる。
校務支援においては、NotebookLMを活用した効率的な教材研究や、AIによる授業案・課題作成アプローチを解説する。さらに、AIを用いた評価手法の現状、その成果と課題についても言及する。生徒の学習支援では、メタ認知能力の向上を目指す「教えてくん」というAI活用事例を紹介する。また、「AI実験アドバイザー」を用いた探究的な学習支援の取り組みについても説明する。これらの事例では、AIを単なる情報提供ツールではなく、生徒の思考を促進し、創造性を刺激する対話的なパートナーとして位置づけている。
本発表を通じて、AI技術が教育にもたらす可能性と、その効果的な活用方策について参加者と共に議論を深め、教育現場におけるAI活用の未来像を探りたい。